「!」

はっとして、九鬼は前を向いた。

特別校舎の前で、倒れている緑と輝。

地面に膝をついている如月さやかと、血だらけの高坂がふらつきながらも、何とか立っていた。

「聞いてないわよ…。こんなに強いなんて…」

さやかは全身で息をしながら、無傷の中西を見た。

「ただの魔物ではなかったな…。魔神クラス…いや、それ以上か」

カードシステムが崩壊した為に、相手のレベルがわからなかった。

「しかし…負ける訳にはいかない」

高坂は、刃が欠けてしまった空切り丸を動けない緑の手から取ると、ふらつきながらも構えた。

「いくぞ」

突きの体勢で、特攻でかけようとする高坂の肩を後ろから、誰かが止めた。

「き、君は!」

驚く高坂に、九鬼は告げた。

「あたしがやります」

「廊下の敵は!?」

「片付けました」

「!」

「だから、任せて下さい」

目を見開く高坂に微笑むと、前に出た。

「九鬼真弓!」

中西は、腕を組み、

「やはり、敗北者では…お前を倒せないか」

にやりと笑うと、

「さすがは、俺の愛する女だ」

満足げに頷いた。

九鬼は、そんな中西を見据え、

「一つだけ…確認したい!」

「何だ?」

「お前が…」

九鬼は一度言葉を切り、唇を噛みしめると、確信を持って訊いた。

「虚無の女神か?」



沈黙が、辺りを支配する。

中西は、九鬼を見つめ…こたえない。

「お前が、虚無の女神…ムジカか!」

九鬼は叫んだ。

「虚無の…」

「女神!?」

さやかと高坂は息を飲んだ。