「くそ!」

全身がまったく動かなかった。

「死ね!」

リオがジャンプした。

光る拳が、迫る。

九鬼は目を逸らさない。

死ぬ寸前まで、戦う術を探す。

あきらめはしない。



その時、再び服部が、九鬼の前に現れた。

「亡霊が!無意味なことを!」

せせら笑うリオ。

「服部…」

動けない九鬼に、服部は微笑んだ。

「亡霊ごと!貫いてやるわ!」

拳が、九鬼の体に突き刺さる寸前、服部の半透明の体が九鬼と重なった。

次の瞬間、九鬼の戦闘服が変わった。

「何!?」

リオの拳は、九鬼にヒットしたが、貫くことはなかった。

逆に、拳の輝きが失われた。

「こ、これは!」

絶句するリオの前で、九鬼は絶叫した。

「うおおおっ!」

気合いで、近くにいたカルマをふっ飛ばした。

「何だと!?」

目を見開き、哲也は九鬼を見た。

ブラックの戦闘服が、光輝くシルバーのボディに変わった。

「お、乙女…シルバー!?」

驚き、震える哲也の前に、九鬼が突然現れた。

哲也だけでない。

全員の前に、乙女シルバーとなった九鬼が立っていた。

「は!」

気合いとともに、同時に蹴りを放つ。

ふっ飛ぶ月無達。

そして、さらに分身した九鬼達がジャンプした。

「月影流星!」

蹴りの雨が、月無達を降り注ぐ。

「二弾キック!」

一度蹴りの雨が止んだと思ったら、相手を蹴った反動でもう一回転し、再び蹴りの雨を降らす。

「ぎゃああ!」

月無達の断末魔の叫びが、廊下に木霊する。

「これが…月の力か」

プラチナの戦闘服が砕け、哲也の魂も粉々になる。

流星二弾キックの勢いで、九鬼は窓を突き破り、校舎の外に着地した。

「ありがとう…」

戦闘服から、光が消えていくと同時に…光が、天に昇っていく。

九鬼の目に、微笑む服部の顔が一瞬だけ映った。

立ち上がり、天を見上げた九鬼の耳に…呻き声が飛び込んで来た。