「うん?」

目的地である特別校舎の方から、自分に近づいてくる高坂に気付き、中西は眉を寄せた。

「中西君だね?」

高坂は笑みを止めると、真っ直ぐな瞳で中西を見据えて言った。

「ここから先は、立て込んでいてね。向こうに行く事はできないんだよ」

その言葉を、中西はせせら笑った後、高坂を睨んだ。

「何を言うか!乙女ブラックである俺様に、行けない所などないわ!」

中西は強引に、前に出ようといたが、高坂の持つトンファーが邪魔した。

「き、貴様!」

首もとに突き付けられたトンファーを見て、中西は激怒した。

「この学校のヒーローであるこの俺に、歯向かうというのか?」

その言葉に、今度は中西が笑った。

「フッ」

「何がおかしい!」

「…」

無言で一度中西の顔を見た後、高坂はトンファーを下げた。

そして、一歩下がると、間合いを開けた。

「貴様…俺を馬鹿にしてるのか?」

中西の眼光が、一瞬鋭くなった。

「ヒィ」

結構離れた位置にいる輝が、小さく悲鳴を上げた。

高坂は二人の反応を気にせずに、トンファーを見つめた後、中西を見た。

探るような瞳で、中西をほんの数秒観察し、一言だけ告げた。

「お前は、誰だ?」

「はあ?」

中西は顔をしかめ、

「貴様!俺の話を聞いていたか?俺は、この学園のヒーロー…」
「そんなまやかしは、どうでもいい!」

言おうとした言葉を、高坂は遮った。

「じゃ…質問を変えよう」

高坂はトンファーを握り締め、

「お前は、人間じゃないな?」

「何?」

中西の眼光が、さらに鋭くなる。

普通の人間ならば、息が詰まり…呼吸困難になる程のプレッシャーが高坂に向けれた。

しかし、高坂は怯まなかった。