「月影になった者は、死しても…その運命から、逃れられない!」

梨絵が叫んだ。

「また転生しても、闇と戦う為に、月影となり…修羅の道を生きなければならない」

リオは少し体を反らし、右腕を前に突きだした。

「そんなこと知らなかった!」

吐き捨てるように、優が言った。

「だけど…それから、逃れる方法がある」

神流の指が刃物のように、鋭くなると…彼女は舌で舐めた。

「虚無の女神の力ならば!」

「月の宿命から、逃れられる!」


「どういう意味ですか?」

緑が、高坂に訊いた。

「わからん。だけどな…」

高坂は目で周りを確認し、

「俺達も、逃げられんな」

呟くように言った。


「虚無の女神は、戦いに敗れ、さ迷うあたし達の魂を集め…こうおっしゃったわ!」

リオの突きだした右手の人差し指が、高坂の額を指差す。

「人間を殺せば!月影の宿命から、解き放ってあげると!」

「そして、殺した人間の肉体を使い!」

「あたし達をよみがえらせてくれると!」

「その為には、数が足りないのよ」

神流が、高坂に近づく。

「まだ1人分しかないから…」

妖しく微笑む神流の姿が、変わる。皮膚が硬化し、全身が鱗のようになる。

「まあ〜あなた達、2人でも足りないけど」

優と梨絵が、緑の前に立つ。

「こいつらは、あたしが殺す!」

「そうよ!あたし達…姉妹がね」

リオの手に、乙女ケースが握られていた。

「!?」

高坂は、目を見開いた。

全員の手に、乙女ケースがあったからだ。

「装着!」

無数の眩しい光が、廊下を照らした。

「緑!」

高坂は半転すると、緑の腕を掴み、全力で走り出すと同時に、白い粉を前方に投げつけた。

「高坂煙幕!」

「な!」

変身の途中であった優と梨絵の視界が、真っ白になった。

コンマ数秒の変身する瞬間を使って逃げようとしたのだ。

「無駄よ」

梨絵達の横を通り過ぎた瞬間、前にカルマがテレポートしてきた。

「は!」

カルマの蹴りが、高坂に向かって真っ直ぐに伸びてくる。