「服部…お前…」

高坂は、半透明の服部を見つめた。

その時、階段を降りきった者が姿を見せた。

半透明の服部の体越しにその者を、高坂は見つめた。

「月に導かれ…闇に目を凝らす者は…」

はち切れんばかりのピチピチの服を纏った女が、高坂に微笑んだ。

「部長!」

高坂の後ろに来た緑が、背中をつけた。

入ってきた出入口にも、女が立っていた。その女は、大月学園の制服を着ていた。

「虚無と化す」


「人は、誰も同じ…」

教室の中から、ギターの弦をつまむ音がした。

「そう哀れなる…」

さらに、隣の教室からも声がした。

「空っぽの存在」

「故に…人は、求める」

「己を求め…」

「だけど…」

「結局…」

「空っぽなのよ」

扉が開き、廊下に並ぶ教室から、2人の女が出てきた。

「月に惹かれ…闇を恐れない者よ」

「虚無に消えろ!」



「彼女達は!」

緑の全身に、緊張が走る。

「…」

高坂は無言で、半透明の服部をずっと見つめていた。

しかし、その服部を…最初に現れた女が後ろから蹴ると、服部の体は煙のようにかき消され…消滅した。

「人の思いなど…こんなものよ」

蹴りを放った女は、にやりと笑った。

「結城…リオ!」

高坂は、前に立つ女を睨んだ。

「部長!」

緑は唇を噛み締めると、木刀を握り締めた。

「彼女達は、行方不明…もしくは、死んだはずでは!」

木刀の先を、出入口からゆっくりと近付いてくる結城梨絵に向けた。

「フッ」

高坂は笑うと、背中を合わせた緑にこたえた。

「死んでいることは、死んでいるようだがな」


「そう…肉体を無くしたという意味ではね」

リオの真横の教室から、佐々木神流が出てきた。

「だけど…再び肉体を得れば、またよみがえる」

ギターを抱えた高木優が、緑の斜め前の教室から出てきた。

「それが…月影の力を求めた者の宿命」

リオの後ろに、テレポートアウトしたカルマが腕を組んで、高坂を見つめた。