太平洋に浮かぶ島の最北端にある岬に、ジャスティン・ゲイは佇んでいた。

この星の大半をしめる海を見つめながら、ジャスティンは物思いに耽っていた。

脳裏に浮かぶのは、魔王との戦いばかり。

何もすることができずに、一撃で沈んだ自分が、どんなに無力かを確認していた。

魔王はまるで…海のような存在だった。

人間1人の力では、どうしょうもない相手。

そんな相手だからこそ、人間は一丸にならなければならなかった。

しかし、人間が一つにまとまることはないのかもしれない。

力を得る為ならば、魔とも交わる人間もいる。

己1人が、助かればいいと思う人間も多い。

集団社会を形成しながらも、個が強い人間のすべてが…一つになることは、夢のまた夢かもしれない。


だが、夢に向かって突き進むのも、人間である。

ジャスティンは海を見つめながら、拳を握り締めた。


「少し待たせてしまったようだな」

後ろから声がした。

「!?」

ジャスティンの全身に、緊張が走った。

わかっていたとはいえ、まったく気配を感じさせないその物腰に、ジャスティンは感嘆のため息をつきながら、振り向いた。

「いえ…大した時間ではありませんでしたよ」

ジャスティンの後ろに立っていたのは、青い甲冑に身を包み、顎に髭を蓄えた屈強の魔神…カイオウである。

「本来ならば、兄弟子である貴殿のもとには、我から会いに行かねばならないとこであるが…。いらぬ…ご足労を」

頭を下げるカイオウに、 ジャスティンは困った。

「兄弟子などと…。あなたの方が遥かに年上ですし…」

ジャスティンは鼻の頭をかき、

「あなたが、こちらに来たら…大パニックになりますよ」

「!」

ジャスティンの言葉に目を見張ったカイオウ。

しばし見つめ合った後、2人は声を出して笑った。

「そうであるな!かりにも、騎士団長である我が人間界に来たら、騒動になるな」

「はい」

ジャスティンは頷いた。