「それでも!」

言い返そうとした緑を、画面から目を離した舞が見た。

しばらく、見つめ合う2人。

やがて、舞はパソコンの画面に視線を戻し、

「この倶楽部に入った者は、みんな…死を見ている。友達や親戚…兄弟を、殺されている。ただ…謎を解こうとしてね。私の姉も…私もね」

舞は、キーホードに指を走らせる。

「私がなぜ…ここに引き込もっているか知ってる?私はね。一年前に、行方不明とされているのよ。生死不明。月影の謎を調べてね」

「え」

緑は絶句した。

「高坂先輩と同じクラスだった姉は、殺されたわ。そして、私も重傷を負った。トドメが刺される前に、先輩が助けてくれたのよ」


「し、知らなかった」

「それから、ずっと…部室にいるわ。ここは、結界が張られているから」

情報倶楽部の部室の結界は、部員の身を守る為というよりも、集められた情報を守る為にあった。

状況によって、都合よく変えられる事実を残すこと。

それが、情報倶楽部の一番大事な使命だった。


「すべての謎が解ける時まで…私は悲しむ訳にはいかないのよ」

画面を睨む舞の横顔を見て、緑は無言で頷くと、木刀を掴み…ドアに向かって歩き出した。

「いってらっしゃい」

舞はキーホードを打ちながら、声をかけた。

「いってきます」

ドアを開き、緑も現場へと向かった。

1人残った舞の目から、涙が流れた。

誰もいなくなってから泣いた。

なぜならば、えらそうに言った手前、後輩の前では泣けないからだ。

「みんな…無事でいてね」

パソコンの画面を見ながら、ぽつんと呟くように言った。