「彼女は必ず来ると」

香坂はフッと笑い、

「そして…」


「装着!」

状況を判断した九鬼は走りながら、乙女ケースを突き出した。

九鬼の体に、黒い光が絡み付く。

「彼女こそ…乙女ブラックに相応しい」

香坂は、目の前に中西の拳が迫っても、目を瞑らない。

「させるか!」

九鬼の飛び膝蹴りが、横合いから中西の肩口に叩き込まれた。

後数ミリで、香坂の額に拳はヒットしていた。

「ま、真弓!」

空中と避けることが出来なかった中西は、バランスを崩し、真横に転がった。

「先輩!」

着地と同時に、九鬼は香坂を見た。

「心配するな」

拳は当たらなかったが、風圧で額が切れ…血が流れていた。

それでも、平気な顔をした香坂は真っ直ぐに立ちながら、

「それよりも、気をつけろ!」

九鬼に叫んだ。

「真弓!」

香坂を見た一瞬の隙に、立ち上がった中西の蹴りが、九鬼に向って放たれた。

「く!」

九鬼は腕を十字に組み、蹴りを受け止めた。

しかし、インパクトの瞬間、九鬼の体は後ろにふっ飛んだ。

倒れることはなかったが、両足が地面を抉り、5メートルは移動していた。

「これが…」

痺れて、すぐには十字に組んだ腕をもとに戻せない九鬼は、絶句した。

「真の乙女ブラックの力」

「そうだ!この力が、真のヒーローの力だ!」

「!」

いつのまにか、真横に中西がいた。

裏拳が、九鬼の頬を殴った。

今度は防御ができずに、九鬼は地面に倒れた。


「力も、スピードも!違い過ぎる!」

中西は、九鬼を見下ろし、

「そんな量産タイプを身に着けて!俺に勝てると思ったか」

「く!」

九鬼は顔をしかめながらも、ゆっくりと立ち上がろうとする。

しかし、ダメージが凄く、すぐに立ち上がれない。

そんな九鬼に、目を細め、

「お前は…俺のそばにいればいい。か弱い力も、俺が補ってやろう。さあ〜真弓!」

中西は、手を伸ばした。

「俺の女になれ!」