折れたトンファーを見つめ、

「やはり…あなたの背中は危険でしたな」

感心した。


「すまない。折るつもりはなかったんだが」

いつも以上に、しならせた蹴りを放ってしまったことに懺悔していると、服部がため息をつき、

「こちらも折らす気など…ありゃせんでしたよ」

折れたトンファーを学生服の内側にしまった。


「大将が呼んでます」

服部は、新しいトンファーをどこからか取り出すと一振りして、感触を確かめた。


「高坂先輩が!?」

「はい」

服部は頷き、

「何でも、怪しいやつをすべて調べるようで…」

「怪しいやつ?」

九鬼は眉を寄せた。

「俺は、今の女教師でして…」

「え!?」

「距離を取って、つけているですが…隙だらけなんですよ。無防備。それなのに、これ以上接近することを…足が拒むんですよ」

「…」

九鬼には、わかる気がした。

勿論、服部はわかっている。

しかし、だからこそ…やらなければならないのだ。

「そんなプレッシャーを与える相手をほったらしにゃ〜あできません」

服部は、トンファーを構えた。

「あの教師の正体暴いて見せますよ」

「無理はしない方がいい」

九鬼は止めようと、腕を伸ばしたが、服部は後ろに下がった。

「心配いりませんよ。何も戦おうって、訳じゃない。ただ…探るだけですよ」


そう言うと、服部の姿が消えた。

「あ!そうだった。大将は、西校舎の裏にいますんで」

声だけが、どこからか聞こえた。

「服部くん!」

もう九鬼の声にも、答えなかった。


そして、それが…服部を見た最後の時となった。