「ふわあ〜」

刹那の腕が落ちた時、廊下の向かうから1人の女子生徒が姿を見せた。

「ん?」

突然足を止めて、鼻をくんくんさせた。

「何か…臭くない?」

廊下に異臭が漂っていた。


「ほら、刹那」

女子生徒の横から、声がした。

「新鮮な腕があるよ」

女子生徒が振り向くと、廊下の窓に映る刹那が笑っていた。

「え?」

反対方向を見ても、ガラスに映る刹那はいない。

だけど、前の方から…何かが近づいてくる音がした。

少し薄暗くなっている廊下で目を凝らすと、ガラスに映っている女が近づいてくるのが見えた。


「え!」

女子生徒は両手で口を塞ぐと、恐怖で動けなくなった。

だけど、近づいてくる刹那の動きが遅いので、何とか逃げることに足が反応する時間を得ることができた。

「い、いや!」

振り向いて逃げようとする女子生徒の首筋に、か細いが力強い腕が絡まっていた。

「ごめんなさいね。申し訳ないけど、あなたの腕を頂くわ」

女子生徒を後ろから羽交い締めにしているのは、ガラスに映っていた刹那だった。

「ひいい」

絡みつく腕が、首を締める。

「心配しなくていいのよ」

ガラスに映っていた刹那は、女子生徒の耳元で囁いた。

「貰うのは、腕だけだから。少し痛むだけだから!」

「!」

もう声も出なくなった女子生徒の前に、両腕がなくなった刹那が迫る。

そして、大きく口を開けた。



断末魔が、廊下にこだました。

血溜まりに、両腕をなくした女子生徒が倒れた。

「あらあ」

ガラスに映る刹那が、女子生徒の顔を覗いた。

「我慢できなかったのね」

女子生徒は、腕をもぎ取られた痛みで絶命していた。

「ねえ〜刹那。他に、欲しい部分はないの?」


「大丈夫…」

刹那は血溜まりのそばに立ちながら、腕を回していた。

「すべて…間に合っているわ」

「そう…。それはよかったわ」

2人の刹那は微笑み合った。