激しい音を心のままに、周囲に叩きつけていた中西は、妙な視線を感じて、演奏を止めた。

ギターの弦に手を当てると、爆音は無音に変わった。

「何の用だ?」

狭い軽音部の部室の端で、壁にもたれている少女を軽く睨んだ。

「べ、別に…」

突然演奏が止まったことに、戸惑ってしました少女は首を横に振るくらいしかできなかった。

「そうか…」

中西は少女に背を向けると、アンプからコードを引っこ抜き、ギターをケースにしまった。

「な、中西!」

少女は、慌てて声をかけた。

中西は足を止めたが、少女の方を向かない。

「お、お前…音、変わったな!」

「…」

「前は、もっと…繊細だったのに…」

「…」

「今は…まったく逆……!?」

そこまで言って、少女は話せなくなった。

横目で自分を見る…あまりにも冷たい目に、凍り付いたのだ。

言葉を発することのできない少女を、しばし横目で見つめた後、中西は前を向いた。

「言いたいことが、それだけなら…行くぞ」

「あっ…そのお」

まだ何か言いたそうな少女を残し、中西は部室の扉を開き、外に出た。

「ああ…」

少女は手を伸ばしたが、扉が閉まる音が虚しく響いた。

項垂れた少女の目に、ケース内に残されたギターが映る。

「そう言えば…あいつ…置きぱなしだな…。昔は、ちゃんと持って帰ってたのに」

教室内にぽつんといる自分と、そのギターはどこか似てるなと…少女は思った。


「ああ…」

ぽつんと出たため息の後、少女のそばの扉が突然開いた。

「すいません。ここに中西さんがいらっしゃるときいたのですが?」

立て掛けが悪い為か…扉はゆっくり開けても音を出した。

だから、少女は顔を向けた。

九鬼が言葉を発する前に。

少女と九鬼の目が合う。

九鬼は自然と微笑み、

「中西さんはいらっしゃらないですか?」

少女にきいた。


「生徒会長…」

少女は目を見開いて驚いた後、キッと九鬼を睨んだ。