よく見ると、学生服に穴があいており…さらに体にもあいていることに気づいた。

満身創痍になって九鬼に、高坂はまた頭を下げた。

「どうしました?」

首を傾げる九鬼に、高坂は頭を上げたが、目を伏せたまま、

「いつの肝心な時に…我々はいない。だから、いつも君に負担をかけてしまう」

「問題ありません。あたしは、この学校の生徒会長ですから」

笑顔をつくる九鬼に、高坂はまた頭を下げると、 ゆっくりと背を向けた。

歩き出す前に、高坂は塀の前にいる三人に声をかけた。

「速やかに、救助活動にはいれ!怪我した生徒達をケアしろ!」


「はい!」

「はあ!」

「がるう〜!」

1人返事がおかしい男子生徒の頭を、女生徒が小突いた。

「もういい!」

「痛て!」

小突かれた男子生徒の様子が、変わった。

獣のような声を発していたのに、普通の人の声に戻った。

「いくぞ!」

小突いた女生徒は、校舎に向かう高坂の後を追った。

「あっ!はい」

正気に戻った男子生徒も、走り出した。

「やれやれ…」

その様子に肩をすくめた後、もう1人の男子生徒は九鬼に頭を下げてから、走り出した。

九鬼も頭を下げると、去っていく高坂達の背中を見送った。



「彼らは、誰ですか?」

九鬼の様子を見て、浩也がきいた。

「は!そうでしたね。転校してきたばかりのあなたは、知りませんでしたね」

九鬼は下から、浩也を見つめ、

「学園情報倶楽部という…この学校の自衛団のようなものです。前の校長であった結城哲也に存在を危ぶまれ…無実の罪で、無期停学処分にされていたのですよ」

「そうですか…」

浩也も、4人の後ろ姿を見送った。

「結城校長が亡くなられたことで、停学が解かれたのでしょう」

「なるほど…」

浩也は頷いた。

「浩也!真弓!」

高坂達とすれ違い、校舎の中から、カレンが飛び出してきた。

その手に、ブラックカードに握り締めながら。