ドラゴンナイトが燃え尽きると同時に、森を探索していた魔物達が、上空へと飛び出してきた。

女の周りを、百体のドラゴンナイトが囲む。

「見つけたぞ!裏切り者!」

長い睫毛が、女の瞳を隠していた。

表情はわからないが、女は落ち着いているのが、全身に漂う雰囲気が告げていた。

「い、いない!」

ドラゴンナイト達は旋回し、女の周りを探した。

「そんな馬鹿な!」

「赤ん坊はどうしたのだ!」

女の周りを飛びながら、きいてくるドラゴンナイトの質問にも、女はこたえない。

「魔王復活の鍵となる…赤ん坊はどうした!」

「…」

何もこたえない女に、ドラゴンナイト達は腰につけた鞘から、剣を抜いた。

「こたえぬならば!」

「殺すだけだ!」

一斉に、切っ先を向けて、円を狭めてくるドラゴンナイト達にも、女は無表情のままだ。

「死ね!」

無数の剣が、円陣の中心を貫いた…はずだった。

しかし、剣は仲間同士で互いにぶつかり合うだけで、斬った感触がなかった。

「蜃気楼?」

まるで、影のように揺らめいた女の体は、気がつくと重なった剣の上にいた。

「な!」

ドラゴンナイト達が唖然としてしまっているうちに、女は刀身の上で回転した。

すると、ドラゴンナイト達の首から上が燃え上がった。

女の周りにしたドラゴンナイト達は、そのまま…森に向けて落下していった。

その様子を周りで見ていたドラゴンナイト達は、一瞬…たじろいだが、剣を握り直した。

戦いの最中で、恐怖を感じ、逃げ腰になった者に、生き残る資格はない。


「油断するな!あやつは、騎士団長にして、魔王の補佐役であるリンネ様の妹だ!」

「一斉にかかるぞ!」


数百のドラゴンナイトに囲まれても、凛とした姿勢を貫く女の名は、フレア。

かつて、炎の騎士団の親衛隊だった女。

しかし、魔王軍を裏切り…、赤星浩一の仲間になり、彼の為に死んだ女。


そして、死んでもなお…彼の為に戦う女である。