「ア、アルテミア…アートウッド」

正確に心臓を貫いたドラゴンキラーの尖端が、胸から突き出ていた。

「ば、馬鹿な…ぐわあっ!」

噴水のような血を吐き出すと同時に、アルテミアはドラゴンキラーを一気に抜いた。

「魔力が使えぬとも、戦える。そんな強さもあることを…あたしは知っている」

そこまで言った後…アルテミアは顔をしかめた。

脳裏に浮かんだ圧倒的な力を持つ…存在。

(だが…そんな強さも通用しない相手がいる)


少女がその場で崩れ落ちるのを、目で追った後…アルテミアは、力を奪う為に少女に手を伸ばした。

「うん?」

しかし、途中で手を止めた。

「お婆様…」

少女の目から、涙が流れた。

「ま、まさか!」

慌てて少女の首を掴み、起き上がらそうとしたが…少女の体も突然水分を失い、ミイラのようになると、砕け始めた。

アルテミアの手の中で、砂と化した少女。

その砂の中に、生徒手帳があった。

アルテミアが手に取り、中を確認すると…名前が、書いてあった。

黒谷蘭花と。

「くっ!」

アルテミアは手帳を握り締めると、

「こいつは、虚無の女神ではない!」

唇を噛みしめた。

と同時に、アルテミアがいた空間が歪み始めた。

「チッ!」

舌打ちすると、アルテミアは周囲を見回した。

「ここに閉じ込める気か!」

今まで、広さがわからなかった空間がいきなり、学校くらいの大きさに縮む。

「舐めるな!」

アルテミアの姿が変わる。

六枚の翼を広げ、上に向けて飛び上がった。