「己の力を過信し過ぎだな。乳臭い…小娘が」

その瞬間、完全に明かりが灯った。

広い。

最初に見えた感想は、そうだが…どれだけ広いか、想像もつかなかった。

遥か向こうに、地平線が見えた。

しかし、だからと言って、目に見える情報だけを信じる訳にはいかなかった。

なぜならば、ここは異空間だからだ。

それでも、圧倒的に広いと思わせるのは、目の前にいる数え切れない程の乙女グレーの多さだった。

「貴様が、ライの娘…天空の女神アルテミアか」

乙女グレーの大群の中央に、棺があった。

そこに腰掛けている少女がいた。

棺の周りは小高い丘になっているのか…膝を抱えている少女からは、女を見下ろす格好になっていた。

「何の用だ?我は、貴様に害することはしない。ただ…この学園の生徒に用があるだけだ」

「フン!」

アルテミアは鼻で笑うと、さらに一歩前に出た。

あと…数メートルで、乙女グレーの最前列にぶつかる。

「どうして…我の邪魔をする?我に、戦う意思はない」

と言いながらも、乙女グレー達は左右に転回し、アルテミアを囲んだ。

「大人しくこの空間から去るならば、手出しはしない」

「へえ〜成る程ね」

周りを囲む乙女グレーを気にせずに、アルテミアは歩き出す。

それと同時に囲む乙女グレー達も、摺り足で移動する。

「だったら、どうして…生徒達を襲った?」

アルテミアは真っ直ぐに、少女だけを見つめていた。

「どうして?」

アルテミアの質問に、少女はクスッと笑い、

「だってえ〜!私の愛する人が、人間ばかりをかまうから!」

と言った後、口元に冷笑を浮かべ、

「単なる嫉妬よ」

「ケッ!」

その言葉を聞いた瞬間、アルテミアは顔をしかめ、

「どっちがガキだ!」

足を止めると、ゆっくりと構えた。

「やる気なの!?」

少女は大袈裟に、身を乗り出し驚いてみせた。

「当然だ」

アルテミアは、少女を見据えた。