「あれは…」

「確かに、チェンジ・ザ・ハート」

生徒達に紛れて、浩也の戦いを見ていたユウリとアイリは、無表情のままで頷き合った。

「チェンジ・ザ・ハートは、赤星浩一とアルテミアしか使えない武器。やはり…あやつは」

アイリの言葉を、ユウリが遮った。

「それにしても、今現れた魔物は、我々の配下のものではないな」

首を捻るユウリの横顔を、アイリが見た。

「すべての魔物が、我々の配下ではない。野の魔物もいるだろうに」

「そういう意味ではない」

ユウリは、魔物が燃え上がると同時に窓側に背を向けた。

歩き出したユウリの横に、アイリも並ぶ。

「今の魔物は…現代に存在するものではない」

「どういう意味だ?」

「滅んだ種族のはずだ」

ユウリとアイリは、廊下を歩く。

「我々魔物も、種の進化をもって、今の力を得ている。その過程で、淘汰された魔物達もいる」

「どこにいくつもりだ?」

ユウリについて歩くアイリには、行き先がわからない。

「地下だ」

ユウリ達は、階段を降りていく。

「地下?」

「ああ…」

一階についたユウリは、地下への階段を探す。

「どこにあるはずだ。地下への階段が」

「地下!?」

アイリは驚き、

「それは、虚無の女神が眠っていたところか?」

「大したものはないと思っていたが…」

ユウリは舌打ちした。

階段がどこにもない。

「どこかに隠しているのか」

アイリは床を蹴り、

「ここから、突き破るか?」

ユウリにきいた。

「有無…。いざとなれば…」

ユウリも床を見た。


「何をしているのですか?」

突然、廊下の端から声がした。

ユウリとアイリは、目だけを声がした方に向けた。

「今は、非常事態のはずです」

2人に近付いて来たのは、黒谷理事長だった。

「魔物の襲撃を受けた場合、速やかに教師の指示に従わなければならない!と決まっているはずですが」