「チッ!」

九鬼は舌打ちすると、刃に向かってジャンプした。

迷ってる暇はなかった。

乙女ケースを手に取ると、それを刃の軌道に合わせた。

ジャンプした時の踏み足に力を込めたことにより、タックルの形を取った。

振り下ろされた刃を、乙女ケースで真っ向から受け止めた。

「みんな!しゃがんで!」

顔をしかめながらも肩を入れて、九鬼は全身の力を乙女ケースに向けた。

九鬼の声に、生徒達は一斉に頭を下げた為、鉈に切られることは防げた。

しかし、生身のままでは大した力が入らない。

九鬼の体は、教室内を滑る。

机にぶつかろうが、バランスを崩した瞬間、九鬼の体は真っ二つになる。

履いている靴の底から、火花が散った。

「ク」

唇を噛み締め、堪える九鬼の反対側の肩が黒板に激突した。

もう限界である。

黒板が軋んでいく。

隣の教室まで、突き破るのかと思った瞬間、刃が九鬼から離れた。

「なあ!」

乙女ケースを掴んでいた腕を下ろした九鬼の横に、中西が立っていた。

「授業なんて、受けてる場合じゃあ〜なくなっただろ?」

九鬼はちらりと、中西を見た。

「だ・か・ら!俺とデートしょうぜ!」

にやりと笑う中西から、九鬼は視線を外すと、

「そんな場合か!」

黒板から離れた。

一つ目の巨人は、第二撃目をくらわそうと、鉈を振り上げていた。

「させるか!」

九鬼は、破壊された窓側からこちらを覗いている一つ目向かって、ジャンプした。

「つれないねえ」

中西は肩をすくめた。

「くらえ!」

九鬼の蹴りが、一つの目の黒目辺りを蹴った。

「ぎゃあああ!」

一つの目の巨人は、裸眼を蹴られた為、思わず鉈を落とした。

「みんな!逃げて!」

蹴りを放つと、その勢いで、教室内に舞い戻った九鬼は、まだ教室にいた生徒達に叫んだ。

無言で頷くと、生徒達は教室から飛び出した。