九鬼から離れていくユウリとアイリは、後ろを振り返ることなく、歩き続けた。

「今のやつが、おそらく…闇の女神の抜け殻」

ユウリの言葉に、アイリは鼻で笑った。

「フン!確かに人間にしては、速いが…我らの足下にも及ばない」

「だが…油断するな報告によると、普段は力を使えないらしいからな。鎧を纏った時、本来の力を発揮する」

ユウリとアイリは、廊下を曲がった。

九鬼達が見えなくなると、突然…目の前に続く廊下の空気が変わった。

「何?」

炎の魔神である2人は、寒さを感じることはない。

どんなに寒かろうが、氷の国だろうが…自ら発熱している体には関係なかった。

もし寒さを感じる場合は、2人の魔力を超えた冷気を放つ相手がいる時だけだ。

「この魔力は!?」

2人の体が、凍えていた。

ぶるぶると震える体に、ユウリとアイリは愕然とした。

「ま、まさか!?」

2人の脳裏に、水の女神マリーの姿がよみがえる。

「め、女神クラスの魔力を持つものがいるのか?」

「だとしたら!」

2人は震えながら、顔を見合わし、

「アルテミアか!」

声を揃えた。

「く!」

2人は顔をしかめると、抑えていた魔力を解放した。

制服が一瞬で燃え尽き、炎そのものの肉体が露になる。

「どこにいる!」

辺りを警戒するが、誰も出て来ない。

「アルテミア!」

冷気は強くなり、炎そのものと化した体の温度が下がっていく。

「こ、このままでは…」

「やられる!」

体温が急激に下がり、先程の肌に戻ると、今度は肌にひびが入っていく。

「ほ、炎の魔神である…我々が!」

ひび割れていく肌を見て、アイリは目を見開いた。

「そのままでは…我々の核が割れてしまった」

ユウリは唇を噛み締め、

「戦わずに…やられるだと!!認められるかあ!」

絶叫した時、後ろから声がした。

「きゃあ!は、裸ですう!」