「貴様ならば…わかるか…」

ジャスティンに向けて、サラは目を細め、

「我は、あの方の本質を知っている。我は…あの方が魔王になる前に、最初に生み出された…魔神の1人。あの方がどう過ごし…どう考えられていたかは、手に取るように、わかっていた…はずだった」

突然サラの表情が、曇った。

しかし、ジャスティンは黙って次の言葉を待っていた。

「だが、あの方は変わってしまった。今、封印されているライ様は、我が知っているライ様ではない。完全に、心が壊れておる」

瞼を落としたサラの姿は、あの騎士団長とは思えなかった。

ジャスティンは、今の言葉でサラの思いを汲み取った。

なぜならば、それは自分と同じだからだ。

そして、ライの気持ちも理解した。


ジャスティンは、サラから視線をそらした。

(なぜ…防衛軍を再編し、前に立たないのですか?)

アートと名を変えて、世界をさ迷っていたジャスティンに、そう問いた人がいた。

その理由は、簡単だった。

(俺は…どこか死にたがっている)

ジャスティンの脳裏に、白い鎧に包まれた金髪の戦士の後ろ姿がよみがえった。

憧れた。

愛しかった。

いつも、後ろをついて回ったが…本当は、隣に…いや、前を守りたかった。

(なのに…!)

黒き巨大な影のそばで、赤ん坊を抱き…微笑む女。

(先輩…)

同じ安定者の裏切りにあい、倒れる女に…ジャスティンは手を伸ばした。

(先輩!)

ジャスティンに抱かれ…口から血を流す女は…微笑みながら、こう告げた。


(アルテミアを…お願い…)

(先輩!!)



あの日から、女の願いだけを糧にして、ジャスティンは生きてきた。

いつでも、死んでいいと思いながら。


(お前は…自分の凄さを、価値を知らな過ぎる)

今は亡き友が、告げた。

(どういう意味だ?クラーク)

(フッ)

クラークは鼻で笑い、

(純粋な人間ではない俺と違い…お前の今立つ地点が、人類の可能性を示している)