「フゥ…」

ジャスティンは軽く息を吐くと、表情を和らげ、口を開いた。

「フレアが連れていた赤ん坊…いや、少年は間違いなく、赤星浩一とほぼ同一人物と推定されます」

「ほぼとは、どういう意味だ?」

サラは、眉を寄せた。

「会えばわかりますが…何かが足りない。そして、何かを補填している」

ジャスティンの脳裏に、崩壊するアステカ王国の玉座の間で、ライと対峙する赤星浩一の姿がよみがえる。

(アルテミアを頼みます)

そう最後に告げた彼。

そして、傷付き意識を失っていたアルテミアの全身を包み…温かい魔力。


「何か?」

サラは、顎に手を当て考え込む。

「多分…それは…」

ジャスティンは一旦、言葉を切った。

そこから先は言っていいのか…わからなかった。

なぜならば、人類にとっての完全な絶望を意味していた。

(しかし…希望でもある)

ジャスティンは心を決め、言葉を続けた。

「魔王ライの復活の時に、明らかになると」

「ウム…」

サラは頷いた。

あまり驚いていないことがわかり、ジャスティンは納得した。

(想定内か…)

ジャスティンは、サラの目を見つめ、

(ならば…)

一番知りたいことをきいた。

「騎士団長である貴殿におききしたい!魔王ライの復活は、いつです」

「…」

サラは無言で、ジャスティンを見下ろすと、 やがて…おもむろに話し出した。

「それは…わからん」


「な!」

その答えに、ジャスティンは驚いた。

カイオウは言っていた。

騎士団長の力を合わせれば、ライの封印は解けると…。

ジャスティンの驚く様を見て、サラは鼻を鳴らした。

「フン!貴様が、何を吹き込まれたのかは知らぬが、ことは封印を解く、解かないの問題ではないのだ」

突然悲しげな表情になったサラは、空を見上げた。

「あの方のこ…」

思わず本音を言いかけたサラは、唇を噛み締めて、言葉を止めた。

血が流れる程、唇を噛み締めながら、ジャスティンに視線を戻した。