かつて…ロストアイランドといわれた大陸に、ジャスティンはいた。

炎の騎士団の総攻撃により、大陸そのものが焼け野原になった土地の真ん中で、ジャスティンは立っていた。

足下には、雑草。

目の前には、最強の魔神がいる場所で。

「フン!」

サラは鼻を鳴らし、ジャスティンの足下に生える雑草を見た。

まるで、その雑草をサラから守るように立つジャスティンに、サラは言った。

「普段、貴様ら人間はそんな草など気はせずはず」

すべての生命が焼きつくされた大陸でも、生まれてくる新たな命。

ジャスティンは、足下を見下ろし、

「そうですが…。このような状況でも、命を紡ごうとする草花の強さに、感動しました故に」

「…」

サラは無言で、ジャスティンを見つめた。

「もし…人間が滅んだ時、このように…命を紡ぐことができようか」


「下らんな」

サラはその言うと、

「我には、人間も雑草も変わらぬ。そこらじゅうで増え、うじゃうじゃとわいてくる。人間も雑草と同じ」

「そうかもしれません」

ジャスティンは顔を上げ、

「しかし…人間は、雑草のようにどこでも生きれない」

肩をすくめて見せた。

「…」

サラはそんなジャスティンを無言でしばし見つめた後、拳を突きだした。

「な!」

突然の攻撃だが、ジャスティンはとっさに体を捻り、拳から回避した。

「それは、無理だ」

「!」

回避行動の為、その場から動いてしまったジャスティンは、目を見開いた。

サラの足が、雑草を踏みつけていたからだ。

「人間は、雑草にもなれない」

サラが足をよけると、ぺちゃんこにはなっていたが、雑草はまだ生きていた。

「こやつらは、踏まれることを前提で生きておる。しかし、人間はどうだ?」

ジャスティンの方に顔を向けたサラは、鼻を鳴らした。

「フン!無理であろう」

鋭い眼光で、サラを睨むジャスティンの静かな殺気を感じ、嬉しそうに笑った。

「話がそれた…。本題に戻るぞ」