「どうなってるのよ!これは!」

魔界内を走りながら、カレンは毒づいていた。

上空を雷雲が走り、雷が光っていた。

流石に、魔界内では頻繁に雷が落ちることはなかったが、それでも大気は震えていた。

「こんな時に、バカ師匠とは繋がらないし!」

カレンは、妙な胸騒ぎをおぼえていた。

プロトタイプブラックカードを取りだし、ジャスティンのいる場所を探した。

普段は見つけることができないが、ジャスティンが使った為に反応をキャッチできた。

ポイント残りを見て、テレポートできることを確認した。

「いけるか」

だけど、すぐにテレポートすることを躊躇った。

ジャスティンが、ポイントを使ったということはだ。そこに、恐ろしい程の相手がいるということになる。

足手まといになるのではないかという思いが、カレンの行動を止めていた。



「どうした?ジャスティン・ゲイよ。お前は口だけか?」

空が雷雲に覆われたのを目にした時から、サラの苛立ちは消えていた。もう感情に、とらわれている場合ではないからだ。

逆に、ジャスティンは焦っていた。プロトタイプブラックカードで、体力は回復させたが…モード・チェンジの多用が、肉体そのものにダメージを蓄積していたからだ。

地面に片膝をつきながら、ジャスティンは息を整え、最後の力をただ一点…拳に集中させていた。

(最後のモード・チェンジだ。それも一発いれたら…恐らく体が壊れる)

ジャスティンは、立ち上がった。

(それでもやる!)

「来るか!」

サラは両手を突きだした。

「モード・チェンジ!」

サラを睨みながら、ジャスティンは叫ぶと同時に、地面を蹴った。

「サラブレイク!」

両手からの雷撃が、ジャスティンを襲う。

しかし、避けている体力はない。

(拳よ!)

ジャスティンの脳裏に、ライの攻撃を切り裂いたティアナの姿がよみがえる。

(先輩のように!光を切り裂け!)

突きだした拳が、サラの雷撃を切り裂いた。

「何!?」

攻撃を放ったほぼ直後に、サラの鳩尾にジャスティンの拳が突き刺さっていた。