「ライ様は、我らの神よ」

リンネの言葉に、アルテミアは心の中では納得していた。そう思うからこそ、彼女は騎士団長なのだ。

「フン」

アルテミアは、会話をやめた。

すると、瞳が赤く輝き出した。

「わかったよ」

フッっ笑った唇の端から、牙が覗かれた。

「!?」

その変化を目にした瞬間、リンネの背中に戦慄が走った。

「これも…あたしの真実だ」

見た目は変わらないが、アルテミアの肉体そのものも変わっていた。

「やっと!本性を見せたわね。おまえを倒してから、赤星浩一も殺してやるわ」

リンネの魔力がさらに、上がる。

「そんなこと…できたとしても、できない癖に」

「な、何!?」

「まあ〜。あたしがさせないけど」

「こ、小娘が舐めるな!」

リンネはジャンプすると、体を捻り、蹴りを放った。

アルテミアは避けることなく、リンネの蹴りを左腕で受け止めた。

今度は、水ぶくれができることはない。

「は!」

気合いとともに、真っ直ぐにだされた足が、蹴りを放った体勢のままのリンネの腹に突き刺さった。

「うぐぅ!」

くの字に曲がりながら、空中に浮かぶリンネ。

その首筋に反転したアルテミアの踵が決まり、下へと叩き落とした。

地面に叩きつけられたリンネを、アルテミアは腕を組み見下ろした。

「言っておくが、赤星はあたしよりも強いぞ」

「フン」

後ろから声がした為、アルテミアは振り返った。

倒れているリンネが消え、腕を組んでいるリンネがそこにいた。

「だけど…あの男は優し過ぎるわ。あんたの父親である王を殺せるかしら?」

首を傾げて見せるリンネに、アルテミアはフッと笑い、

「優しいから…あいつは、あたしの為に王を倒す。自分が傷ついてもな」

リンネと向き合った。

「そ、それがわかっていて行かせたのか!」

リンネの表情が変わる。

「生半可な覚悟ではないんだよ。ここに来た時からな」

「そんなことさせるか!」

アルテミアとリンネの拳が、ぶつかる。

しかし、さっきのように互いにふっ飛ぶことはない。

「いかせるか!」

「王を殺らせるか!」

2人の魔力がぶつかり合った。