サラから放たれた気が、ジャスティンを数ミリ後ろへ押した。

その際に、ジャスティンの皮膚に痛みが走った。

「なめているのは、貴様だ!我とやり合った時、貴様はモード・チェンジを使わなかった!なぜだ!使わなくとも勝てると思ったか!」

サラの怒りの理由を知ったジャスティンは、途切れない痛みを皮膚に感じながらも、質問にこたえた。

「あの時はまだ…使う準備ができてなかった」

「言い訳を!」

サラが人差し指を向けると、ジャスティンの後ろに見えた雪山が吹き飛んだ。

「!?」

ジャスティンの頬が切れ、血が流れた。

「我はギラとは違う!貴様の土壌に乗ることはない」

「そうらしいな」

ジャスティンは血を拭うことなく、サラの動きから目を離せなくなっていた。

ギラはあくまでも、ジャスティンを倒すことだけに力を集中していた。

だからこそ、ギラブレイクにしても威力は、至近距離を破壊するまでに抑えられていた。

しかし、サラは違う。

倒す為に、威力を抑えるつもりはない。周囲を破壊しても、ジャスティンを殺すことを優先するだろう。

普段ならば、サラもそのようなことをしない。

しかし、相手がジャスティンだからだ。

「貴様の強さは、危険だ。赤星浩一とは違う意味で、王の心を惑わす」

サラは、手のひらを広げた。

「俺がか?」

ジャスティンは笑った。

サラの手の向きから、逃げることはない。

「ライは知っているはずだ。そんな強さを!彼の隣には、ティアナ・アートウッドがいたのだからな!」

「く!」

サラは、顔をしかめた。

「誰よりも、人の未来の為に生きた人がな」

ジャスティンは、自然と微笑んだ。

「時間をやる」

サラは手を下ろすと、ジャスティンを睨みながら告げた。

「傷を回復させろ。今の状態で戦っては、騎士団長の名が泣く」

「これは、ご丁寧に」

ジャスティンは、ブラックカードを取り出すと、治癒魔法を発動させた。

すべてが回復する訳ではないが、体力が戻った。

服を破り、拳に巻くと、

「待たせたな」

ジャスティンは改めて、構え直した。