「ギラブレイク!」

「モード・チェンジ!」

互いに持てるすべての力を使い戦う2人の戦士。

しかし、ほんの少しだが…差がつき始めていた。

「こ、これが!」

ギラは驚愕していた。自らが放った雷撃よりも、速く動くジャスティンのスピードに。

「空の女神を倒した力か!」

ギラブレイクを掻い潜り、ギラの脇腹に突き刺さるジャスティンの拳。

「ぐわあ!」

思わず身を捩る程の痛みに、ギラは苦悶の表情を浮かべながらも、内心は微笑んでいた。

(そ、そうだったな…)

ギラの脳裏に、数十年前の記憶がよみがえる。

(あんな子供が…)

最初会った時、ギラは少年だったジャスティンを赤子を捻るように扱えた。

しかし、次に会った時…油断はあったが、ギラは負けた。

まだ十代の少年にだ。

(そうか…)

ギラは、自らに向って来るジャスティンの動きを目で追いながら、心の中でフッと笑った。

(成長か…)

魔神であるギラの強さの違いは、本気か本気でないである。

しかし、人間であるジャスティンは違う。

ここまでの強さを得る為に、日々努力したのだ。

「うおおっ!」

ジャスティンの拳が、ギラの体を連打する。

(そうか…)

ギラは、拳の嵐を受けながらも、笑っていた。

痛みをこえた感動があった。

普段ならば、意地でもつかぬ両膝を地面につけていたが、気にならなかった。

なぜならば、今始めて…人間を感じているからだ。

「うおおっ!」

ジャスティンの渾身の右が、ギラの巨体をふっ飛ばした。

背中から雪の中に落ちたギラを見て、ジャスティンは始めて意識した。

高次元の戦いというものを。

凄まじいぶつかり合いをしながらも、足下の雪が溶けてある部分が少ないのだ。

無駄なく戦えば、最小限の動きですむ。

ジャスティンは自らのスピードとキレには満足していたが、ある問題にぶち当たっていた。

かつてDigシステムで、カバーしょうとしていた問題点である。

つまり、肉体の防御である。

騎士団長であるギラの体に、何発も叩き込まれた拳は…皮が捲れ、骨が砕けかけていた。