アルテミアの手刀が、女の胸から背中までを貫いていた。

「ど、どうして…新しい人間であるあたしよりも…この女を」

女は、最後の力でピアスを掴んだ。

「ごめん」

僕は謝った。

「いやよ!あたしと子供を!」

ピアスを引きちぎろうとしたが、腕を残して体だけが後ろに下がった。

「え」

バランスを崩した女の目に、シャイニングソードを手にしたアルテミアの姿が映る。

「フン!」

気合いとともに、女の体は袈裟斬りの形で真っ二つにされた。

そして、再生するよりも速く、細胞が塵になっていた。

消えていく体で、女はピアスを握ったままの自らの手を見た。

(あたしは…愛する人の子供が欲しかった。一度だけでも…そんな子供を産みたかった)

涙も塵をなり…女は消滅した。

と同時に、ピアスを掴んでいた手も、塵となった。

「ごめん」

僕は、塵となった女がいた空間を見つめ、謝った。

「僕は、君と子供を作れないよ。なぜならば…僕は…」

「行くぞ」

アルテミアは、背を向けて歩き出した。

「もう…人間じゃないから…」

最後の言葉は、口にはしなかった。





こうして、人間もどきの脅威は去った。

気を失い倒れているはずの男の姿が消えていたが、その時は女のように、塵になったと思っていた。

「赤星…」

アルテミアはすぐに飛び立つことをせずに、しばらく大地を歩きながら、ある方向を睨んでいた。

「行くぞ。こんな下らない存在をつくりだしたやつのもとにな!」

アルテミアが睨んでいる遥か先には、ライの居城があった。

大地を踏み締めて歩くアルテミアに、僕は最後の戦いを覚悟した。

再び魔王と激突するのだ。

今度は、封印ではすまないだろう。

互いの命をかけた戦いが始まる。

(だけど…アルテミア)

僕は、アルテミアを戦わすつもりはなかった。

(君を父親殺しにはさせない。戦うのは、僕だ)

もう迷うことはない。

決意を固めた。

僕はすべてをかけて戦うことを、誓った。