「違うな…」

玉座の間。闇に包まれた空間で、口元に笑みを浮かべながら、座るライ。

「人間は、癌細胞よりも質が悪い病原菌だ…とは思わないか?カイオウよ」

「…」

玉座の前で、闇に跪くカイオウは頭を下げたままで答えることはなかった。

「フッ」

ライは軽く笑うと、話題を変えた。

「貴様とこうして2人で話すのは、久々だな」

「はい」

カイオウは返事をした。

「この城の中で、我が造ったものではない魔神は、お前だけだ。そして、我が妻だったティアナを認めたのも、お前だけだ」

「…」

カイオウは答えることをせずに、少しだけ頭を上げた。

そんなカイオウを無言で、数秒見下ろした後、ライは言葉を続けた。

「我は…人間を滅ぼすことに決めた。異論はないな?」

「…」

カイオウはやはり答えないが、再び頭を下げた。

「人間の変わりは用意した。これで、野にいる魔物達も退屈はしないだろう」

ライは話しながらも、じっとカイオウを見つめていた。

「人は…この世界にはいらぬ存在だからな」

そう言った後、最後に再びカイオウに訊いた。

「異論はあるないな」

「は」

カイオウは返事をすると、ゆっくりと立ち上がった。そして、姿勢を正すと、頭を下げた。

「王のお心のままに…」

「フン」

ライは、軽く鼻を鳴らした。

「御免」

最後に再び深く頭を下げ、その場から去ろうとするカイオウに、ライは最後の質問をした。

「しかし…人間は、そう簡単には、滅んでくれぬかな?」

頭を下げながら、ゆっくりとライに背を向けて、歩きだそうとしたカイオウは足を止め、

「それは…」

カイオウは、唇を噛み締めた。そして、本当は口にしたかったことを飲み込み、別の言葉を吐き出した。

「わかりませぬ」

カイオウは振り向き、もう一度頭を下げた後、すぐに玉座の間から消えた。

そんなカイオウを目で見送りながら、ライは笑った。

「まあ…いい」

カイオウが言おうとした言葉。

それは…。