「やつらの生物的な肉体構造を詳しく分析するには、科学の力が必要だ」

副司令官の言葉に、白髪の男は口ごもった。

「し、しかし…ですな…」

白髪の男の何か言いたげな様子に、副司令官は頷き、

「言いたいことはわかっている。この世界を、あの世界のように、科学の繁栄によって汚すことはない!」

そう言い切った。

「副司令!」

その時、廊下の向こうから、1人の隊員が走ってきた。

「分析結果がでました」

「有無」

副司令官の目が、変わった。深く頷くと、走ってきた隊員に先導されて、副司令官達は研究室を目指した。

白く塗られた鉄の扉を開いた時、副司令官達は信じられない結果を聞くことになった。

「何だと!?」

それは、知ってはいけないことだったのかもしれなかった。

「彼らは…」

やけに汚れた白衣を身に纏い、髭をボーボーに生やした男は、副司令官に斜め四十五度の角度で顔を向けながら、数秒間を開けてから言葉を発した。

「我々人間と変わりません」

「な」

絶句する副司令官を見て、髭の男は逆にあまりない頭髪をかきながら、視線をそらし、言葉を続けた。

「…と言いましても、健康的な人間にはありませんけど」

「ど、どういい意味だ!」

副司令官の取り巻きの1人が、声を荒げた。

「それはねえ〜」

髭の男は、試験管の中で液体に沈んでいる細胞を見つめ、少しだけ顔をしかめた。

「は、早く!言え!」

取り巻きの苛立ちに、髭の男は深くため息をついてから、細胞の正体を口にした。

「癌細胞ですよ…」

「癌細胞!?」

取り巻きは、驚きの声を上げた。

副司令官は息を飲み、試験管の中の肉片を見た。

「増殖の速さ。そして、人間に本来ある細胞が、裏返った姿…」

髭の男は、試験管に手を伸ばすと、肉片を目の前まで持って来てじっと見つめた。