(よっぽど…自分に自信があるだな)

僕は、妙に感心した。

(あまり…綺麗でないのに)

と、僕が失礼なことを考えている間に、アルテミアの怒りがボルテージに達した。

元々…女神である。そんじょそこらの美女を軽くぶっちぎるくらいの容姿を誇るアルテミアである。

ブロンドの悪魔等…いろんな陰口を言われているが、容姿に関してはまったくない。

悔しいが、絶世の美しさである。

そんなアルテミアより…自分は綺麗だと女は言った。

(死んだな…)

僕は、確信した。

しかし、ほっておく訳にもいかなくなった。

アルテミアの怒りは、先程の島を破壊したのを1としたら…今は、百をこえている。

このまま…怒りをぶつけたら、太平洋の島々が消滅する。

「殺す!!」
「モード・チェンジ!」

アルテミアが気を放つ前に、僕は強制的に体を入れ替えた。

「きゃあ!」

アルテミアから変わった僕を見て、女が悲鳴を上げた。

正直…今までの人生で、女性に悲鳴を上げられたことは、皆無に等しい。

無意識に照れてしまい、頭をかいた僕は…すぐにはっとした。

真後ろから、殺気を感じたからだ。

僕の振り返り様のバックアンドブローが、男をふっ飛ばした。

「よわあ〜い」

女は、地面に転がる男を見て、口を尖らせた。

「それに比べて…」

視線を僕に変えて、再び女は胸の前で指を重ね、

「素敵!」

身をよじった。

「う!」

やはり…照れる。純な自分を恨む。

たじろく僕の隙をついて、男は後ろから僕に抱きついた。そして、耳許で囁くように言った。

「め、女神!」

熱い息を耳で感じ、僕は思わず力任せに男を振り払った。

「!?」

予想以上の力に、僕は驚いた。

(こ、こいつ…)

僕は反射的に構えようとしたが、今度はピアスから聞こえてきたアルテミアの怒声に、思わず背筋が伸びた。

「あ、赤星!て、てめえ!」

さっきまでの怒りは、僕に向けられていた。

(仕方がない…)

僕が覚悟を決めた時には、男は目の前から消えていた。