「ア、アルテミア…」

沈んでいく島を見ながら、僕は頭を抱えていた。

「やり過ぎだよ」

「生きてる人間はいなかっただろうが」

アルテミアは、島の崩壊により津波が起こり、大荒れになっている海を見下ろしながら、呟くように言った。普段の力強さはない。

「で、でも」

「…この世界の地形を傷付けたくはないが…やつらを生かしておく訳にはいかなかった」

アルテミアは唇を噛み締め、

「それに…まだやつらの子供達が大量に増え続けている」

周囲の海の向こうを睨んだ。

「た、確かに…」

その増え方は、異常だった。

「今のやつらを殺せば…終わる!」

アルテミアは翼を広げると、一瞬で姿を消した。

女神の一撃で破壊された島は、数分で…海の底に消えた。

そして、海は…何事もなかったかのように、静けさを取り戻した。





「太平洋の島が、一つ消えました!」

「な、何!?」

オペレーターの報告に、藤堂は通信室で絶句した。

スクリーンに映された世界地図に、無数に点滅していた赤いシグナルの一つが消えた。

その数分後には、他のシグナルも消えたが、島ごとが消えることはなかった。

「ガムシャ島に到着した部隊より、連絡ありました。数人の島民に被害はありましたが、敵は殲滅されていました」

ショックから動きが止まっていた藤堂の耳に、新たな情報が飛び込んできた。

「な、何だと!?だ、誰がやった!」

我に返った藤堂は、報告したオペレーターに叫んだ。

「生き残った島民の証言によりますと、白い翼を持った天使…鋭い目をした短髪の女…。というまったく違う風貌の女が目的されています」

「女?」

藤堂は、眉を寄せた。

「はい」

そして、次のオペレーターの言葉で確信を持った。

「ただ…目撃者はこう言います。妙に偉そうだったと」

「!?」

藤堂は、はっとした。そして、相手を認識した。

「て、天空の女神!」

崩れ落ちるように、目の前のディスクに手をついた藤堂の指は…震えていた。



「はくしゅん!」

その瞬間、新たな島にいたアルテミアはくしゃみをした。