(そうなんだ…。いつも、自分を武器というんだ)

食事もとらない。睡眠もとらない。

小さな頃は、そういうものだと思っていたけど…それは異常なことなんだと、旅を続けるうちに知るようになった。

そして、コウヤはもう1つ大事なことを知った。



(僕の名は、浩也。そして、お母様の本当の子供ではない)

浩也は食事を終えると、フレアの胸に抱かれながら、眠るのが日課だった。

(僕の本当のお母様は…)


それを考えようとすると、思考が停止した。

いや、停止する…ほんの数秒前に、いつもある映像が浮かんだ。


(赤星!全力で来い!)

黒髪に、六枚の翼を広げた…女の人。

その人は、僕に剣を向けていた。

(僕は×××××のことが!)

だんだんと迫ってくる女の人の顔。

その顔に、涙が浮かんでいるのがわかった。

なのに…。

その女の人に、刃は突き刺さった。

鮮血とともに、光が僕と女の人を照らした。


女の人は、胸から背中まで剣が突き刺さっているのに、優しく微笑んだ。



その表情が、お母様と重なる。

いつも…優しく微笑んでくれているのに、

どこか悲しい。


僕は…そんなお母様を笑顔にはできないのかな。


でも、心の底では…無理と思っている自分がいる。


ドクン。

そんなことを考えていると、いつも心臓が脈打つ。

その鼓動は、少しずつだけど…大きくなっているのがわかった。

そして、その鼓動がもっともっと大きくなった時、何かが目覚めるような気がしていた。

(何が?)

それは、自分でもわからなかった。