「グレング!」

リンネがいなくなったことを確認すると、先程侮辱されたと感じた魔神が立ち上がった。

「何が下らんだ!」

「フッ」

刈谷は鼻で笑うと、

「そんな意味もわからないのか?」

ゆっくりと立ち上がった。

「グレング」

隣でまだ跪いているユウリが、たしなめた。

しかし、後ろから襲いかかる魔神の方を向かずに、刈谷はため息をついた。

「誇り高き炎の騎士団に…このような下賤の者は、いりませんよ」

「皆の前で恥を!灰にしてくれるわ」

「灰になるのは…」

刈谷は口許を緩めると、腰を捻った。

「貴様の方だ」

真後ろに放った回し蹴りが、魔神の首筋にヒットした。

「やれやれ…」

アイリはため息をつきながら、立ち上がった。

「うぎゃああ!」

蹴られた魔神の全身から、炎が噴き出した。

「せめて…炎の魔神らしく…燃え尽きるがいいわ」

刈谷は蹴り足を振り切ると、そのまま元の体勢に戻った。

魔神はまるで花火のように、一瞬だけ盛大に火花を上げた後…灰になった。

刈谷の蹴りは、ある魔物の攻撃に似ていた。

「魔神同士の戦いは、禁止されているはずだ。それに、魔神の数も減っているというのに」

アイリは、ユウリを挟んで立つ刈谷を睨んだ。

「…何でも、魔神を造るものができたと聞きましたが?」

刈谷は、初めて灰になった魔神がいた方を振り返った。

「あの程度のものならば…大丈夫でしょう」

「その造ったものが、問題なのだ」

ユウリは、アイリと刈谷の間に立ち上がると、横目で刈谷を睨んだ。

「お前の考えも、我には下らなく思えるわ。まるで人間のように、振る舞おうとしている」

「我は、人間ではありません。誇り高い!炎の騎士団の魔神であります」

「誇りか…」

ユウリは、それ以上話しても無駄と思い、リンネ同様その場から消えた。

「ユ、ユウリ!」

慌てて、アイリも後を追った。

それが合図となったのか…次々にその場から、魔神が消えた。

1人になった刈谷はしばし目を瞑った後…その場から消えた。