「アルテミア!そういう意味じゃないんだ!」

僕は、剣を爪で絡めると、アルテミアに顔を近付けた。

「魔王ライは、お前の父親だ!娘であるお前が、ライを殺すのは駄目だ!」

身内で殺し合う悲劇を、僕は知っていた。

女神となった…実の妹である綾子と戦ったからだ。

後ろから、妹に心臓を貫かれた。

そんな経験をしてしまった僕は…肉親同士の争いをアルテミアに経験させたくなかった。

(いや…何度も経験しているか…)

ライとアルテミアは、何度か戦っている。

しかし、アルテミアがライに直接勝ったことはない。

アルテミアが、即位するということは…ライを倒すということになる。

(直接戦ったとして…まだライに分があると思う)

僕は心の底では、覚悟を決めていた。

僕がやるべきことを…。

アルテミアと剣を交えながら、その思いは強くなっていった。


その時…。

「!」
「!?」

2人の頭に、多くの人々が死んでいく叫びが響いた。

「またか!」

僕の全身に、力が入った。

すると、僕の気で、思念体であるアルテミアの体がかき消された。

「赤星!」

ピアスから、アルテミアの声がした。

「おお!」

僕の背中から炎の翼が発生すると、そのまま大空に飛び上がった。

「何だ?この感じは!?」

多くの人々が死んでいく感覚を、確かに感じる。

だけど、数が減っていないのだ。

「人間の気が…増えている!?」

しかし、僕はその気を感じながら、違和感も覚えていた。

「何だ?この異質な感じは!」

確かに、人間の気だと思う。

なのに、どこか違う。

違和感を覚えながら、僕は太平洋に浮かぶ島へと向かった。

ブルーワールドにある島にしては、珍しく魔物がほとんどいない為に、観光地として栄えていていた。

その島で、何が起こっているのか。

僕はスピードを上げた。