ジャスティンは掴むと同時に身を捻り、蹴りを叩き込み…そのまま、落下した。

「よし!」

ジャスティンは谷底に向って落ちながら、にやりと笑った。

落下するジャスティンの足下に、魔物が一匹回り込んで来たからだ。

「ぎぎい?」

驚く魔物の頭に落ちると同時に、蹴り上げ、ジャスティンは他の魔物に襲いかかる。

攻撃と落下を繰り返しながら、ジャスティンは目と頭で常に、魔物の動きを捉え、軌道をシミューレーションしていた。

群れの中で、飛べないはずのジャスティンが飛び回る。

何匹か倒した後、ジャスティンはもう足場を確保しながら戦える程の数がいなくなったと判断すると、残った魔物を蹴り、崖沿いの狭い足場に戻った。

「ぎぇぇ!」

チャンスと見た魔物達が、一斉に飛びかかってくる。

「すまないな」

ジャスティンは目を瞑ると、魔物を無視して歩き出した。

「もう…チェックメイトだ」

風を切り裂く音が一瞬、ジャスティンの鼓膜を震わした。

どこからか飛来したブーメランが、残りの魔物を切り裂いた。

ジャスティンが崖の方に手を伸ばすと、ブーメランはその手の中に戻ってきた。

谷底に落ち、万年雪の中にめり込んでいく魔物達の死骸を見ることなく、ジャスティンは歩き続けた。

「せめて…自然の糧となれ」

そう言ってしばし歩いた後、ジャスティンは足を止めた。

「雪の中じゃあ無理か…」

ちらっと谷底に目をやろうとして、ジャスティンはため息をついた。

「やれやれ…見る時間もないのか」

今度は、山の方から…細い道を列をなして歩く魔物達がやって来た。

骸骨の体に、凍りついた鎧を着込んだ姿は滑稽であるが…一つの目の中で、蛇のようなものが蠢いていた。

「見たことのないタイプか」

ジャスティンはブーメランをしまうと、拳を握り締めた。

「まあ〜魔物図解に、載せることにしょう」

ジャスティンは足場を蹴ると、走り出した。

魔物達は、凍りついた剣を振り上げると、一斉に走り出した。

ジャスティンは不適に笑うと、走るスピードを一気に上げた。