「…」

意を決して、魔界に入ることを決めたカレン・アートウッドは、日本地区から一番近い朝鮮半島ルートから侵入しょうとしていた。

天空の騎士団や2人の女神の襲来、さらに旧防衛軍の侵攻等の熾烈な戦いを経験しながらも、未だに結界の張られた空間は、人類の意地を感じさせた。

旧防衛軍出身者で結成された義勇軍が、この地に駐留していたのだ。

プレハブ小屋が並ぶ義勇軍の敷地を迂回して、結界を越えようとしていたカレンの耳に、歓声が飛び込んできた。

彼らが興奮しているのは、ある声明文が全世界に向けて、放たれたからだ。

「今ここに!人類防衛軍の設立を宣言する!」

高々と読み上げられた言葉に、プレハブ内から一際大きな歓声がわいた。それから、数秒後…歓声は爆発することになる。

その理由は簡単である。

壇上に、1人の男が上がったからである。

「人類防衛軍の最高責任者!ジャスティン・ゲイ!」

声明文を読み上げた男に促されて、前に出たのは、ジャスティンだった。

伝説のホワイトナイツの最後の1人の姿に、プレハブから一番大きな歓声がわいた。

ジャスティンは、深々と頭を下げた。

そして、数秒後…今度は顔を上げると、すぐに言葉を発することなく、ゆっくりと噛み締めるように、話し始めた。

「…皆さん。今…いや、人間という存在が誕生した時から、人類はいつも未曾有の危機にさらされて来ました。それを今まで切り抜けて来られたのは、これまで生命を紡いで来た先人達のおかげです。この新たな組織である人類防衛軍は、過去から未来を紡ぐ架け橋になる為に、設立されました」

ジャスティンは、そこで言葉を切り、

「人類の今までの叡知を、今生きる者達と、今から生まれてくる者達へ繋いでいく。我らはその為に、今日結成されました。それは、人類の未来の為!人という種を守る為に!そこに驕りもたかりもない!ただ未来を生きる為に!すべての人類を守る為に結成されたのです!」

ジャスティンの言葉は、電波に乗ってすべての人類に届けられた。