「…」

サラは、ギラを目だけで見ると、そのまま横を通り過ぎた。

ギラはため息をつくと、歩き出した。

(我ら魔は、愛を知らない。しかし…痛みは知っている)

ぎゅっと一度だけ、自らの胸を握り締めると、すぐに表情を引き締めた。

ここは城の中である。

騎士団長である自分が凛としないと、下のものに示しがつかないことはわかっていた。

「…」

無言で歩きながら、行く宛がないことにギラは気付いていた。