すると、レンズの色が変わり…刹那の体をスキャニングし出す。

転がる首に反応はなく…まだもがいている胴体に反応があった。

九鬼は右手で手刀をつくると、反応がある部分に突き刺した。

そして、胴体の中を指でまさぐり、あるものを抜き取った。

それは、肉片だった。

ただし…その肉片だけが、血にまみれ、脈打っていた。

「こ、これは」

九鬼は掴んだ肉片を見つめ、驚いた。

なぜならば、その形は…胎児に近かったからだ。


「そいつは…産まれることができなかった人間…」

九鬼の後ろから、声がした。

慌てて振り返ると、学生服を着た…刹那が立っていた。

「お前は!?」

九鬼は妙な気を感じて、無意識に構えた。

「フッ」

そんな九鬼に笑うと、刹那は歩き出した。

「わたしは、刹那。その肉片が、望んだ…姿」

「そう…」

「そうなりたかった姿」


「な!」

九鬼は絶句した。

いつのまにか、九鬼の周りを数人の刹那が囲んでいたからだ。

「わたしは…」

一番最初に現れた刹那が、九鬼に接近し、顔を近づけた。

「産まれる権利を剥奪された…人間」

今度は、耳元で別の刹那が囁いた。

「折角…命を授かったのに…産んではくれなかった」

「わたしは…おろされた…」

「殺された!」

九鬼の周りを、数人の刹那が回る。

「まだ…きちんと…人間に…」

「なる前に…」

「わたしは…小さな肉片のまま…」

「捨てられた!」

「捨てられた」

「捨てられた」


「殺された!」


「く!」

九鬼を囲むように、刹那達の動きが止まった。

「だから…わたしは…」

「肉体のない…あたしは…」

「他の人間から、体を貰うことにしたの」

「いいでしょ?」

九鬼の前に止まった刹那が、首を傾げた。

「それでも…あたしを」

にやりと笑い、

「また殺すの?」

九鬼を見つめた。