「いつも傷だらけよね」

ディアンジェロとの特訓により、ボロボロになって帰ってくるジェースに、玲奈が訊いた。

「仕方がないだろ!相手は、あの銃牙だぜ!」

幼い手に余るサイレンスを握りしめながら、ジェースは玲奈を睨んだ。

そんなジェースに、玲奈は目を丸くした。

「ったく!組織の仕事だけじゃなくて、こんなことやってたら〜いつか死ぬぜ」

毒づきながら、自分に背を向けたジェースに、玲奈は少し顔をそらしながら訊いた。

「そんな弱音をはく弱虫に、どうして…あたしが助けられなくちゃいけなかったのよ」

少し前の任務中で、玲奈は魔神と偶然遭遇した。

死を覚悟した時、ジェースが助けてくれたのだ。

サイレンスで、魔神の気をそらし、その隙に玲奈は逃げれたのだ。

「お前が、俺より弱いからだよ」

ジェースはそう言うと、頭をかき、

「そう言えば…あの時も死にかけたな」

当時の状況を思い出していた。

「あたしが、弱い?あんたよりも」

玲奈は、ジェースの背中を見つめながら、唇を握り締めた。



(ジェース…)

思えば…あの頃から、ジェースの背中を追っていた。

玲奈は、ソリッドの背中でも麗華の背中でもない…ジェースの背中を思い出しながら歩き出した。

(そう…あの背中を追い越す為に、あたしはいるのよ!)

玲奈の目から、迷いはなくなっていた。