「うわあっ!」

幼き頃、ジェースはいつも特訓を受けていた。

特訓と言っても、生易しいものではなかった。

いつも死がそばにあった。

「ずるいよ。ディアンジェロ…」

岩場で血だらけになったジェースの手には、サイレンスが握られていた。

「この銃…。撃つといつも転けそうになるんだよ」

泣き言を言うジェースに、白髪の老人ディアンジェロは目を細めた。

「慣れろ」

そう言うと、ディアンジェロは銃口を向けた。

「くそ!」

ジェースは慌てて避けると、もたれていた岩に銃弾で穴が空いた。

「サイレンスは、お前の右腕で撃って初めて、真の効果を発揮する。さすれば、どんなものでも破壊できる!」

ディアンジェロは、引き金を弾き続けた。

「オウパーツすらもな」

最後の声は、呟くように言った。

(それに…お前は…)

ディアンジェロは、ジェースを拾った時を思い出していた。

彼を拾った町は、ある者達に襲撃されて全滅した。

その者達は、ディアンジェロには絶対に勝てない存在だった。

それは、2人の女神…ネーナとマリー。

特に、マリーは幼い子供の生き血を好んだ。

山のように並んだ子供達の死骸の中で、唯一生き残っていたのが、ジェースだった。

そして、そのジェースの両親をディアンジェロは知っていた。

彼の父親は、有名な剣士だったからだ。

彼は、女神達に瀕死の重傷を負わされながらも、ディアンジェロが助け出した息子の状態を知り、あるものをつけた。

それこそが、オウパーツだった。

とある場所で、父親が発見したものだった。

父親は、オウパーツをつけた息子をディアンジェロに託した。

「戦え!」

ディアンジェロは、ジェースに銃口を向けながら、彼の傷口から血が止まっていることに気付いていた。

(これが…こいつが特別な理由。そして、オウパーツをつけられた理由)

父親が死んだ為に、ジェースの秘密を知るのは、ディアンジェロしかいない。

(それでいい)

ディアンジェロは、ジェースを鍛える為に、何度も撃った。