「フッ」

高坂の質問に、麗華は口許を緩め、

「あたしは、オウパーツの装着者。それ以外に意味はないわ」

逆に高坂を憐れむように見つめた。

「だったら!そのオウパーツが、もし魔王の手に落ちたらどうします!」

「仕方がないわ。恐らくは、さらに無敵になるわね」

「人間はどうするんです!」

高坂は、麗華の方に一歩だけ前に出た。

「赤の王が、オウパーツを得れば…人間の為に戦ってくれるわよ」

まるで他人事のように言う麗華に、高坂はわかっていたとはいえ…愕然とした。

「あ、あなたは!」

「勘違いしないでね。あたし達は、すべてのオウパーツを真の王に届けるだけよ。それにより、人間がどうなろうが知ったことではないわ!」

「クッ!」

高坂は、麗華の言葉ですべてを悟った。

例え、オウパーツによって精神が侵されているとしても…。

「あなたはもう!情報倶楽部の人間ではない!」

高坂は、ダイヤモンドの乙女ケースを突きだした。

「装着!」

ケースが開き、目映い程の光が溢れると、高坂の全身を包んだ。

そして。

「高坂!ダイヤモンドパンチ!」

「馬鹿な…後輩ね」

麗華のオウパーツから振動波が発生し、襲いかかる高坂の体を包んだ瞬間、変身が解けた。そして、そのまま地面に倒れた。

「な!」

変身が解けただげではなく、全身が小刻みに震えて動けない高坂。

「月の鎧がなければ、塵になっていたわよ」

そう言うと、自分の横を通り過ぎようとする麗華に、高坂は最後の力を使って訊いた。

「あなたは…人間が…どうなってもいいのか…」

その質問に、麗華は足を止めた。

「下らない質問ね」

麗華は、高坂を見下ろし、

「自殺する人間もいる。つまり、自己破滅ね。だったら…すべてを壊したい人間もいる。人間だから、人間を守る必要はないのよ」

「だが…人間は…人間からしか生まれない」

「あのね…」

麗華は、視線を前に変えると、

「あたしは、どっちでもいいのよ。このオウパーツを王に渡せればね」

そのまま歩き去った。