「少し疑問に思っていたことがあった。お前達は、オウパーツをつける前は、そこまで強くなかったはずだ。例え…数人かがりでも、お前達に不覚を取ることはあり得なかったはずだ」

組織から逃げている時に、ジェースはベアハングとソリッドと遭遇した。

その時、余裕だと思っていたのに、ジェースは苦戦したのだ。

「ククク…」

ジェースの言葉を聞いて、ベアハングは笑った。

ジェースは、顔をしかめた。

なぜならば、土手っ腹に空いた穴が塞がって来ていたからだ。

「貴様と違い…我々は、オウパーツの声を完全に遮断することはできなかった。それを知った組織の上層部は、あることを思い付いた!それが!」

傷口が治るだけではなかった。

ベアハングの体自体が、変わっていくのだ。

「魔獣因子!」

ベアハングの見た目が、熊の魔物そのものになる。

「魔獣因子だと!?」

ジェースは、銃口を向けながら、目を見開いた。

「この世界には、ないものだった。しかし、ある人物から、その因子を存在を知った組織は、人間を魔物に変える実験を行った!幾度とない失敗を得て、我々にその成果はいかされたのだ!」

ベアハングの穴が塞がった。

「我らこそが、オウパーツを身に付け、人間を超えた存在!ライなどに渡す必要があるか!すべての人間を従えるのは、我々だ!」

「き、貴様!」

人間じゃなくなったベアハングを見た瞬間、ジェースの中の何かが切れた。

「うおおおっ!」

ジェースの咆哮に,右腕のオウパーツが反応した。

サイレンスを左手に持つと、振動音を増し、まるでドリルのようになった右腕を…ベアハングに叩き込んだ。



「うん?」

微かに学園内に漂うオウパーツの波動を感じ、麗華は足を止めた。

「始まったか…」

フッと笑った麗華の前に、高坂が駆け寄って来た。

「先輩!」

高坂は敢えて、先輩と言った。

その呼び方に、麗華は何も言わず、ただこう訊いた。

「何?」

高坂は唾を飲み込むと、一呼吸置き、麗華を見つめ、

「あなたに訊きたい!あなたはもう…情報倶楽部の人間ではないのですか?」