放たれた銃弾は、振動波によって粉々になった。

「それにだ!」

ベアハングは、両足で廊下を蹴った。

「サイレンスは撃った瞬間、無防備にさせる!」

勢いを増したベアハングは、右腕が上に上がった体勢となったジェースの胸元に飛び込む。その手には、いつのまにかナイフが握られていた。

「終わりだ!ジェース!」

「なめるなよ」

ジェースは腕が跳ね上がった勢いに逆らわずに、後方に背中から倒れるように飛んだ。

理事長室は廊下の一番奥にある為に、すぐにジェースの跳ね上がった手は、壁につくことになる。

しかし、ジェースはサイレンスを回転させ、銃底を壁に激突させると、今度はその勢いを利用して、襲いかかってきたベアハングの真下に滑り込んだ。

そして、再び銃口をベアハングに向けた。

「馬鹿目!至近距離でも!」

と言った瞬間、ベアハングは絶句した。

オウパーツの振動波が、発生しないのだ。

「!」

ベアハングははっとした。

突きだされたサイレンスを握る右腕もまた…オウパーツでできているのだ。

「共鳴させて!消しただと!?」

「ご名答」

ジェースは、胸のオウパーツを通り過ぎて腹に銃口が来た瞬間、引き金を弾いた。

「ぎゃああああ!」

女の金切り声のような銃声が、撃たれたベアハングの叫びをかき消した。

ベアハングの巨体が、廊下の先に激突した。

「クッ」

しかし、撃ったジェースもダメージを受けていた。

サイレンスを撃った反動で、肩を廊下の床に強打していた。

「ジェース!」

窓の外で、唖然としながら戦いを見ているティフィン。

「何事ですか!」

廊下での騒ぎに気付き、理事長室の扉が開いたが、立ち上がったジェースは、左手で扉を途中で止めた。

「ティフィン!」

「うん」

ティフィンは頷くと、開いている隙間から理事長に飛び込んだ。勿論、邪魔をさせないようにする為だ。

扉が閉まったのを確認すると、ジェースは再び銃口を前に向けた。

そこには、土手っ腹に穴が空いたベアハングは立っていた。