「わかりました…。当校は、あなたを生徒して迎えます」

黒谷理事長は、ジェースの編入を認めた。

その理由はただひとつだった。

月の女神によって、人類の為につくられた学園が、人類の危機になるかもしれないオウパーツを持つ少年を野放しにする訳にはいかなった。

(最後のパーツは、島とともに海中にある。願わくは、この学園ですべてのオウパーツを回収して、封印する)

黒谷は、理事長室から去っていくジェースの後ろ姿を見つめ、

(それが、月の防人である我らの使命)

決意を固めた。

そんな強い視線を背にしながら、理事長室を出たジェースは、廊下の向こうから別の視線を感じて、立ち止まった。

「どうした?ジェース」

ジェースの変化に気付いたティフィンが、声をかけた。

「ティフィン…。外で待ってくれ」

ジェースは廊下の窓に目をやり、

「来客が来たらしい」

学生服の中に、手を伸ばした。

「お、お前!学校の中で!」

驚くティフィンに、ジェースは叫んだ。

「早く行け!」

次の瞬間、女の悲鳴に似た銃声が廊下にこだました。

「フフフ…」

廊下の端に、熊のような大男が姿を見せる寸前に撃たれた銃弾は、確実に男の急所にヒットした。

しかし、当たった部分から硝煙が立ち上るだけで、まったくダメージを受けていなかった。

「この世界にある数多くの銃…。そのすべてのもとになったといわれる伝説の銃…サイレンス。異世界から来たとも言われるが…」

廊下に現れた男は、ベアハングである。ベアハングはにやりと笑い、

「オウパーツの前では、無意味だ」

そのままジェースに向かって、突進してきた。

「チッ」

舌打ちすると、ジェースもベアハングに向かって走り出した。

「ジェース!」

ティフィンは逃げることを忘れて、ジェースの背中に叫んだ。

「オウパーツ以外なら!」

ジェースは走りながら、ベアハングの額に向かって引き金を弾いた。あまりの威力の為に、サイレンスを撃つ度に腕が跳ね上げる。

「無駄だ」

ベアハングの胸についたオウパーツが振動し、空間を歪めた。