ライの怒りの波動は、城にいた騎士団長達には感知されていた。

「サラよ…」

ライのそばにいるだろうサラの身を、ギラは案じたが…玉座の間に行くことはない。

なぜならば、自分達の生奪権は、ライにあるからだ。

「…」

リンネは、何も言わずに無言で城の中の回廊を歩いていた。

「リンネ様…」

ライの波動を感じ、震えるユウリとアイリに、リンネは口に開いた。

「心配するな。何もあるはずがない」

リンネは、ライの変化をわかっていた。

しかし、ライは自分に自由を与えたが、本音はぶつけないことも理解していた。

(所詮…あたしは、魔王の人形)

ライの母…輪廻に似ていることを、彼女は知らない。

しかし、特別扱いされていることは、わかっていた。

自分がやったことをすべて許すライが…自分を見ていないことも気付いていた。

(それでも…あたしは、王の炎)

そして、魔王の気を感じなくなった時、リンネはユウリとアイリに告げた。

「王パーツは、いらなくなったかもしれないわね」

「え?」

「どういう意味ですか?」

ユウリの問いに、リンネは口元に笑みを浮かべながら答えた。

「だって、神のご加護っていうでしょ?ご加護は、神が与えるもの。神自身に、護りは入らないのよ」

「リンネ様…」

ユウリは、リンネの口調に嬉しさを感じたが、それを口にはしなかった。

「あたし達は、そんな神を脅かす者を排除するのみ」

リンネの口調が変わった。虚空を睨むと、うっすらと瞳が赤くなった。

「赤星浩一とアルテミア」

リンネの歩くスピードが、少し速くなった。

「我々炎の騎士団が、排除する!」

そう言った瞬間、リンネの姿が回廊から煙のようにが消えた。