「王よ…」

闇の中…久々に戻った城の中で、ライは玉座に座っていた。

その前に、跪くサラ。

「クッ!」

ライは顔をしかめた。その瞬間、闇に包まれた玉座の間に、赤く禍々しい光が二つ出現した。

「リンネはなぜ!奴らを殺して、オウパーツを奪わないのだ!」

空気を…いや、空間さえも震わす程のライの怒りの波動を受けながらも、サラは表情一つ変えずに、控えていた。

「なぜだ!」

玉座から立ち上がったライに気付き、サラはおもむろに口を開いた。

「恐れながら申し上げます。王よ」

サラは少しだけ、顔を上げた。

「オウパーツは、単なる防具。あなた様のお力ならば…無用のものかと…」

「き、貴様!」

サラの言葉を聞いた瞬間、ライの両目の輝きが増した。

サラの全身を凄まじい衝撃が貫いた。

しかし、それでもサラは、微動だにしない。

「我は、王だ。王は、不覚を取ってはいけない!今回、封印されたことで、我は思い知らされたのだ!油断も、思い上がっても駄目だ!すべてを圧倒的に、何もさせぬ前に始末しなければならない!」

わなわなと震えながら、興奮気味に話すライに、サラは悲しみを覚えた。

(やはり…ライ様は…)

サラの脳裏に、王になる前の空牙の頃の姿がよみがえる。

少し惚けながら、おどけて見せるが…その芯にあるものは、揺るぎなく圧倒的な強さを持っていた。

サラ達を率いながらも、凛とした後ろ姿に、どれほどの魔物が頼りがいがあると思ったことか。

それは、バイラの時も変わらない。

それなのに…今のライは、感情に支配され、ただ力を振るうだけの存在に見えた。

「王よ」

サラは、ライの魔力の衝撃波が荒れ狂う玉座の間で立ち上がった。

騎士団長でなければ、即死している程の力に、サラの全体を包む赤い鎧が砕け、傷だらけの裸体を露にした。

しかし、サラは毅然とした態度で、ライを見つめ、

「お気を鎮め下さい」

諭すように言った。

「貴様!」

ライは手を突きだした。圧倒的な魔力が、サラに向かって放たれた。しかし、それでも、サラは避けなかった。