加奈子は目を瞑った。


(お前に、憧れている)



いつも皆の盾になり、誰よりも前で戦う…九鬼に憧れていた。


いや、乙女ソルジャーになる前から…

加奈子は憧れていていたのだ。

憎しみは、憧れの裏返し。


(真弓…)

目を開けた時には、加奈子は実世界に戻っていた。

(死ぬなよ)



安心したのか…意識を失った加奈子のそばに、理香子と…乙女ソルジャー達が駆け寄ってきた。








「加奈子…」

九鬼は乙女ケースを胸に押し付け、ぎゅっと抱き締めた。

「理香子…ありがとう」

そう呟いた後、九鬼は乙女ケースを前に突きだした。


「装着!」

黒い光が、九鬼を包むと同時にジャンプし、廊下からグラウンドに飛び降りた。

雲一つない空に、月が浮かぶ。

九鬼は月を見上げた後、電流で縛られた刹那を見た。

すると、刹那の自由を奪っていた電流が消えた。


「さあ…どこまでやれる?」

九鬼が飛び出した校舎の真上で、アルテミアが佇んでいた。



「…」

九鬼は、刹那に向かって歩き出す。

「お、乙女ブラック…」

自由になったとはいえ、刹那はまだ痺れて動けない。

顔を上げ、近づいてくる九鬼を睨んだ。

「いや…違う!?」

刹那は目を見開いた。

近付いてくる乙女ブラックの体が、月に照らされて…輝いていく。

「友の思いが…あたしに、力と輝きをくれた」

九鬼は、真っ直ぐに刹那を見つめ、

「月の輝きは、太陽の反射に寄るもの。月自体は、輝くことはできない。それは、あたしも同じ」

九鬼は拳を握り締めると、

「友の優しさが、あたしを輝かせる!」

腕を軽く振った。

すると、酸化していた銀が輝きを取り出したが如く…銀色に輝く乙女ソルジャーが現れた。

「人の優しさと希望で輝く光の戦士!乙女シルバー!推参!」