男は狼狽えながら、

「困りますわ!あんたの相手は、同じオウパーツを持つ者と決められてます。わたしが、戦った日にゃあ〜他の方々に怒られます」

「他の方々?やつらか…」

ジェースは顔をしかめた。

「そうでしたねえ」

男はにやりと笑った。次の瞬間、男の手に、無数のナイフが現れた。

「オウパーツを手に入れたら!わたしも、王になれる資格を得れる」

ナイフを投げようとする男に、ジェースは背を向けた。

「死ぬ気ですか?」

銃声がまた響いた。

「え…」

男は、後ろから頭を撃たれていた。

ゆっくりと近づき、倒れた男の体から、ひかるの肋骨を抜き取ったのは…田所純一だった。

「やれやれ〜やはり、組織は病んでますね」

純一は頭をかくと、

「それに、オウパーツは危険ですね。女の子を平気で殺す…咎人にするんですから」

倒れているひかるの死体に手を合わせた。

「…」

ジェースは答えない。

純一は肋骨に刻まれた文字を確認することなく、カードを取り出すと、魔法で粉々にした。

その際、じっとカードを見つめるジェースに、純一は言った。

「君は、待たないのかい?」

「フン」

ジェースは、顔を横に向け、

「お前こそ、さっきのを、警察に持ち帰らなくてよかったの?転職したばかりだろ」

ジェースの言葉に、純一は苦笑した。

「警察は、組織と繋がっている。だから、俺は簡単に転職できたんですよ。在処を知られたら、利用されるだけ。だから…破壊した方がいい」

その時…月が二人の真上に来た。思わず、純一は空を見上げた。

「地上より綺麗だな」

「…」

純一の呟き、ジェースは背を向けると歩き出した。

「お前こそ、どうする?」

遠ざかる背中に、純一は叫んだ。

「組織は、オウパーツの在りかを聞き出せと、命じたのだろ!?このまま手ぶらで帰っていいのか?」