ひかるの目から、一筋の涙が流れた。

「組織は、あたしに殺すことを許さなかった!だから、組織を抜け、あなたを殺すことにしたのよ」

ひかるは、いつのまにかジェースの右の死角に移動していた。

「お父様の敵!」

「ひかる…」

銃口は、ジェースのこめかみに狙いをつけられていた。

「俺を殺したら…許してくれるのか?」

「許す?なぜ?どうして?どうして!許さなくちゃいけないのよ!」

ひかるは絶叫した。

「そうだな…」

ジェースは笑った。

「さよなら、ジェース」

ひかるは、引き金を弾いた。

部屋に轟いた銃声は、確実に撃たれたことを告げたが…。


「ど、どうして?」

ジェースが軽く上げた右腕が、銃弾を跳ね返していた。

「お前は…王の腕が、どちらか知らなかったのか?」

ジェースの右腕には、オウパーツがついていた。

「チッ」

舌打ちとともに、後ろに回ったひかる。

しかし、ジェースはいない。

「ひかる」

ジェースは、ひかるの後ろにいた。

「ジェース!」

「ぎゃあああ!」

女の断末魔のような銃声がフロアに轟き、ひかるの首から上を吹き飛ばした。

哀れな死骸となったひかるの体が、首から血を噴き出しながら、床に倒れた。

パチパチ。

その時、拍手が上から起こった。

「さすがは王の腕…オウパーツを持つお方だ」

吹き抜けになった天井から、1人の男が飛び降りて来た。

「そして…その腕でないと撃てない銃…サイレンス。見た者に、永遠の静けさを与える…。まあ〜皮肉ですわ」

男はナイフを取り出すと、ひかるの死体に近づき、

「こいつの父親知ってますか?右足のオウパーツを盗んだだけでなく…他のオウパーツの在処を示す記録を消去した後、自分の娘の肋骨に特殊な魔法で刻み込みやがったんですよ。子供のとき、死んだら解剖する予定だったんですけど…生き残るし」

男は、ひかるの胸を裂き、肋骨を抉りだした。

「あった、あった。本当…頭でよかったですわ。胴体でしたら」

肋骨を上着の内ポケットにいれ、笑顔で振り返った男は、ビクッと体を震わした。