「ジェース…。あたしのお父さんは、あるものを壊そうとしたの。どうしてって?…だって、そんなものがあるから人は奢り高ぶるっていうのが、お父さんの口癖だった。過ぎた力を求めるから、人間は不幸になるの」

ひかるの父は、組織の技術部門の責任者だった。

彼はあるものの存在を発見した。それは、神話の時代から伝説にはなっていたが...人間の目には触れたことがなかったもの。

最初発見したものを見た時、組織の者達は狂乱した。そして、全総力を上げて、残りの部分を捜索した。その結果、集まったのは5ヶ所のパーツ。

それこそが、オウパーツであった。

残りは2つ。

しかし、その5個のパーツが揃い、禍々しい光を放つのを見た時、ひかるの父は震撼した。

これは、人間には扱えない。

しかし、組織は実験を止めなかった。オウパーツを、組織が育てていた子供達につけることにしたのだ。どうなるかわからなかった為に、体のできていない幼い子供につけることにした。さらに、一人に数個をつけるのをさけ、4人の子供に各パーツを装着させることにした。

その4人の中に、ひかるが候補に入っていた。それを知った父は、何とか順番を最後にしたが...いよいよ娘の番となった時、逃走した。ひかると...彼女が装着することになっていた右足を持って。

その逃走の途中、ジェースが撃ったのだ。

しかし、父親の死体からは、右足のオウパーツは見つからなかった。

生き残った娘から聞き出そうとしたが…ひかるも知らなかった。


「…そして、お父さんは月に殺されたの」


ひかるはつねに、ジェースに付きまとった。

彼女が、組織からいなくなるまで…。

彼女を思い出す時、ジェースはふと足を止め、空を見上げた。

「あたしは、いずれ…月を破壊したい」

月を見上げながら、そう語ったひかるの横顔をジェースは、忘れられなかった。


「そうか…」

ジェースは笑った。

「肝心な事は、覚えてない癖にな」