そして…成長したある日。

ジェースは…いつものように人を殺した。

何とか思い出す記憶ができた時、彼はある組織にいた。

そして、月夜の晩。

月を背にして、崖の上から、逃げる親子の内…父親を撃ち殺した。

ただいつもの如く…組織の命令で。

月夜の逆光に照らされて、相手からは、ジェースは見えなかったはずだ。

頭がふっ飛んだ父親よりも、ジェースの方…つまり、月を睨んでいる子供がなぜか、脳裏に残った。

ジェースが、七歳くらいの頃…組織こそが正しいと思っていた頃だ。

普通のように、誰かを毎日殺していた。

ご飯を食べさして貰う条件が、生き残ることだったからだ。

父親がなぜ…逃げていたのかを、ジェースに教えたのは……その時生き残った子供だった。

優秀だった子供は処分せずに、組織は育てることに決めた。


「あなたが、ジェースね」

今日も人を殺し、施設に帰ってきたジェースに、女の子が笑顔で話し掛けてきた。

「この施設で一番強いって、みんな噂してるよ」

一度殺したターゲットのことは覚えていないが、その女は覚えていた。

(殺していないからか…)

だけど、別に何の感慨もない。

無視して、女の側から離れようとすると、女はジェースの前に回り込み、

「あたしの名は、ひかる。七歳よ」

妙に馴れ馴れしいひかるの笑顔と、握手を求めて来る仕草に、握手は拒否したが、名前だけ告げた。

「ジェースだ」

「お歳は?」

「知らない…」

この施設にいる子供に、歳などない。関係ない。毎日生きるか死ぬかだからだ。

「だったら…多分、あたしと同じ歳くらいだから…七歳で!同じ歳がいいから!」

満面の笑顔で、ひかるはジェースに歳をくれた。

(銃と身体とコードネームだけの俺に…歳をくれた女)